江本昌子の「ぶちおきゃん!マチャコの思い出話」 第9回「事情聴取」 江本昌子公式ホームページ

江本昌子の

著者:江本昌子

第9回 「事情聴取」

毎週木曜日更新

作者へのお便りをお待ちしてます。

        ↓

警察で取調べを受けた。と、いっても犯人ではなく通報をした方なのだが、初めての事なのでドキドキした。

事件はある日の昼過ぎ
目の前のタクシーから降りた男が運転手を引っ張り出して殴る蹴るの大修羅場。
これは大変と、わたしの携帯で即110番して助手席の友人に渡し実況を報告してもらった。どうも酔っ払いみたいで大きな声を上げている。
私達はこれ以上近づくととばっちりを受けそうなので少しバックして離れたところで警察の到着をやきもきしながら待っていた。

サイレンを鳴らして警告灯をつけ二台のパトカーがタクシーをはさみうちするように道路いっぱいに止まった。
やれやれこれで一安心。家に帰ってほっとしたのかうつらうつら。横になってすぐ携帯が鳴った。
「警察の者ですが。今日通報された方ですね。もう少し詳しく状況が知りたいので今からそちらに伺ってよろしいでしょうか?」え〜!?パトカーが家に来られちゃ私絶対犯人しか見られない!!
「いえ、私の方から警察へ伺います」

免許の更新しか用がないので、四階の捜査二課なんて初めて。
小さな取調べ室に案内されそこで今日の事件の状況を事細かに聞かれた。
コーヒーなんぞいただいてもどこに入ったかわかんない。
テレビの刑事物でよく見る開きの小さな窓もあってきょろきょろ落ち着かない。
り〜ん。わたしの携帯が鳴った。
娘からだ。
強持ての刑事さんがどうぞとおっしゃるので出てみた。
「もしもし、お母さん。わたし今パソコンでお母さんの原稿打ち込んでるんだけど、読めない漢字があるから教えて」
ふんふん、仕方ない わたしの乱筆乱文では読みにくいのは当たり前
「あのね、何とかの親分って書いてあるところ。これ何って書いてあるの?」

第五回で書いたチャーリー姉さんの話、
麻雀の場面で書いた任侠の親分ってとこだわ
http://www.nwr.co.jp/emoto-masako/emoto-masako005.html

やだ
よりによって今警察署なのよ

わたし身体をよじって伏目がちに小さな声で
「、、、、にんきょう」
「はあ?何?大きい声で言ってくれないと周りうるさくて聞こえないの!」
エッ!やめて〜 ここは警察っちゃ。

「にんきょうよ」
先ほどより少しボリュームをあげて言ってみた。
「何?もう一回言って」
聞き取らんかい!ぼけえ!私 もうやけくその大きな声で
「にんきょうの親分って書いてあるそ!」
刑事さんお目めマンマル
「任侠ってなんのことぉ?」
「やくざの世界のことよお」
「じゃあ、やくざの親分って書いたほうが分かりやすいんじゃない?」
「ううん、任侠のほうが義理人情が厚そうだからそっちにしたの」
「ふうん、わかった」
ぷちっ


ふぅ〜〜どうしてわたしってこうタイミングの悪い不幸な女なの。
取調べ室から出ると捜査課いっぱいの警察官や刑事さんがいっせいにこっちを見てるような気がして恥ずかしかった。

わたしが鬼竜院花子だったらきっと言ってやるわ
「なめたらあかんぜよ!」

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