江本昌子の「ぶちおきゃん!マチャコの思い出話」 第12回「教科書」 江本昌子公式ホームページ

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著者:江本昌子

第12回「教科書」

毎週木曜日更新

作者へのお便りをお待ちしてます。

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同級生の高田さんが店に来た。彼女とは中学生まで一緒で高校であちらは進学校、私はマンモス女子高と進路が別れたが今でもいい友達である。
「わたしねえ、ずーっと心にしまいこんでて貴方に謝らんといけんことがあるんよ」
神妙な顔で言い始めた
「小学校二年のとき、私国語の教科書忘れてどうしようって舞い上がってワ〜ンって机にひれふして泣いてたのね。そしたら貴女が‘どうしたん?‘って聞くから国語の教科書忘れたって言ったら‘じゃあ私が取ってきてあげる‘ってピューって教室から出て行ったそ。授業が始まってだいぶしてホイッて教科書渡してくれたんやけど、わたし絶対先生に叱られると思ったのに先生何も言わんかったんよ。帰って母に叱られたけどあん時は本当にありがとうね」
「へえ〜そんなことあったっけ?」
覚えてない。

当時の私は学校が終わっても帰らずよく居残りをしていた。担任の西田先生がやさしい先生で残務をされている間、私は図書館から借りてきた本を読みあさっていた。先生が「帰るよ」って言われるまでそうしていた。
「江本さん、こちらにきなさい」
「はい」
先生は机の引き出しの奥からチョコレートを出し「みんなに内緒にしときましょうね」って言われる。そんな素敵な先生だからきっと高田さんの教科書のことわかってくださったのかもしれない。だって全然覚えてないんだもん。


高田さんは、けったいな人です。みんなが憧れる新学校のセーラー服と他の高校の制服をかえっこして繁華街をうろちょろ。何往復もしておもしろがってみたり、成人してスナックへ飲みにいくと私に歌ばっかり歌わせて本人は汗びっしょりで踊り狂ってる。それも全部盆踊り。バラードであろうが洋楽であろうが「愛の賛歌」でチョチョン ノチョン!と手拍子されちゃあエディットピアフだって怒るぜ!本当底抜けに気のいい友である。

先日、最愛のお母様の訃報を聞きショックだった。「貴女と一緒だと母が元気になるので三人でカラオケ行こうね」と、言われていた約束も果たせなくなってしまった。彼女の家で亡きお母様の写真を見せてもらった。そこには娘とまったく同じ振りの盆踊り姿のお母様が写っていた。


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