江本昌子の「ぶちおきゃん!マチャコの思い出話」 第18回「恐怖のドライブ」 江本昌子公式ホームページ
江本昌子の
著者:江本昌子
第18回「恐怖のドライブ」
毎週木曜日更新
作者へのお便りをお待ちしてます。
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第14回マムシ指の回で出てきた、わいせつチンれつ罪の常習犯の寿司屋のおっちゃんは我が町内の自治会長。どんな町かい!!
ポコチンを見せたがる以外は結構 人の面倒をよくみてくれて細部にわたり愛着のある町づくりに励んでくれていた。
昭和30年初め頃、このおっちゃんは車の免許を取得した。出前用に購入した車は業務用の貨物車でなく普通乗用車。これを自慢げに毎日ピカピカに磨き上げていた。免許とりたてのおっちゃん、運転したくてしたくて店が終わると必ず車を動かしていた。あるお休みの日、人を乗せて運転したいということで うちの家族がドライブに誘われた。
父は休みの日に佃煮のようにいる子供らがうっとうしいのか「行っといでぇ〜」と上機嫌。プップー!というクラクションと同時に8人プラス姉の友達二人計10人が車に乗り込んだ。パンパンに膨れた車内は身動きひとつできず酸欠状態。
「おっちゃん、どこ連れてってくれるのぉ?」
「海水浴場まで連れてっちゃる!」
「やったあ!レッツゴー!」
プスン、プスン!あれ?アクセルの踏み込みが足らずエンスト。
「わりぃわりぃ、こねえ(こんなに)乗せて走ったことがないからのお」
焦った
おっちゃん、今度はジェット機かという位にふかしあげバフンバフンとうさぎ跳びしてまた止まった。なんとか無事発進したものの自転車のほうが早いんじゃないかい?とツッコミたくなるほど超安全運転。
大通りから右折して海のほうへいく交差点でおっちゃんはそのまま直進して曲がらない。
「おっちゃん、海あっちやけど??」
わんさかいるギャラリーがやかましく言うと それまで額に汗して無言のおっちゃん、
「、、、、、曲がれんかった」
エ〜〜〜〜〜!!どこいくんやろこの車。
だいたい運転手を圧迫するほどギッシリ乗ってるのもどうかと思うしバックミラー覗いたってうちの兄弟がびっしり詰まって後ろは全然見えない。さすがにこの辺でドライブどころではなくなった。
「おっちゃん 海行かんでええから帰ろうやぁ」
「おう、そうしようか」
といって、Uターンする場所求めて延々と30分走り続け、やと向きを変えることができた。上り坂はやっとこさ登りきれたけど下りはもうジェットコースター。
キャアアアアア!車内大絶叫!スリルとサスペンスのドライブを終え無事帰り着いた時は世界中の神に感謝した。
今から6年前、入院されてたこのおっちゃんのお見舞いに姉と二人で出かけたが、思ったよりお元気で一安心したけれどもあてていたおしめをやっぱり嬉しそうにベリベリとはいで見せた。