江本昌子の「ぶちおきゃん!マチャコの思い出話」 第36回「元気君」 江本昌子公式ホームページ

江本昌子の

著者:江本昌子

第36回「元気君」

毎週木曜日更新

作者へのお便りをお待ちしてます。

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元気君という名のオス猫を飼っていた。といっても、もともとは娘の知人が飼っていた猫なのだが、彼女がカナダへ帰国することになったのでうちで飼うことになったのである。外国人が覚えた日本語って感じのネーミングらしく「元気君ねえ、、、」と、初めは馴染めなかったけど、その名の通り活発な猫だったので、正解!まさしく名は体を現す!である。


なかなか賢い猫で我が家にもすぐ慣れ、あっという間に大きく育った。長いしっぽをリンと立て、大行でクール。用事があるときだけゴロゴロと喉を鳴らす。その横着な態度が大好きで何とも言えず癒される。我が家では小さい頃から猫がいたのでどっちかといえば犬よりも猫派なのである。元気君は家にじっとしてない猫でベランダに出たかと思うともういない。うちは二階なのに”ぴゃっ”と飛び降りて行き夜まで帰ってこない。お腹がすくと玄関でニャーと一鳴きしドアを開けてやる。だが、お風呂に入ってたいして遅くなるとニャンゴロニャンゴロぶつくさ文句を言って入ってきて餌を食べる。一眠りしたらまた玄関でニャ〜と呼ぶ。開けてやるとまた朝まで帰ってこない。飼い主に似るって本当やん。

ある日、車で出かけていると、ここんとこ二週間帰ってこないうちの元気君が前方を歩いている。しっぽが長いのですぐ分かる。「元気〜」と車の窓を開けて呼ぶと振り向いた元気君、愛想笑いでニャ〜とひと鳴きし、そそくさとよその家に入っていくではないか。ありゃ何してんのぉ。
「マイケルちゃん、どこいってたのぉ」ってそこの家の人が言ってるし、なんだなんだあ!?帰ったら説教してやる。近所の人にそのことを告げると
「あら、あの角の家ではタマちゃんって名前になってるよ」だって、ちくしょー、家にいないわけだ。精力絶倫で元気君と同じガラの子猫が山と出てきた。「おう、うちの子かぁ」と孫を見るようでうれしかった。

タフネスな猫で長いこと飼っていたが寿命はやってくる。病気にかかって動物病院に連れて行ったけど治らないと言われた。慢性的な肝炎であった。水も飲まない、えさも食べないというのが数日も続いたがムクッとおもむろに起き上がり、玄関でニャ〜とちいさく鳴く。最後のお別れの挨拶に回りたいのであろう。戸を開けてやるといつもならさっそうと飛び出て行くのに、私の顔をシカと見てゆっくりと出て行った。階段をピョコタン、、、、ピョコタン、、、、と一段ずつ手足を震わせながら降りていき血をペッと吐きながらよろよろと揺れながら進むと草木に隠れていたたくさんの猫がいっせいに泣き声をあげた。

夜、仕事から帰ってくると玄関先で元気が横になっている。いつもならちゃんと座っていて私を見つけるとニャーと迎えに来てくれるのに「元気ー!」走って駆け付け触ってみたがもうすでに冷たく硬くなっていた。生き物は情が移ると家族と一緒。その家族と死に別れるのは悲しすぎる。
「もう動物はかわん!」そう心に誓った。

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