江本昌子の「ぶちおきゃん!マチャコの思い出話」 第40回「タイフ〜ン」 江本昌子公式ホームページ

江本昌子の

著者:江本昌子

第40回「タイフ〜ン」

毎週木曜日更新

作者へのお便りをお待ちしてます。

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私だけでなく、商売家の下町の子供らは親が店を開けているので行けないのである。
そのあぶれ組は、近くの三階建てのビルの屋上に集まって、大きく目の前に上がる花火に「タマヤ〜」と歓声を上げていた。
一家が祭りごとに出かけるのは難しいものがあったが、台風が来ると、店を閉めて皆が揃うので、不謹慎な言い方だが台風というと嬉しかった。

車座になり「待ってました」とゲームが始まる。
トランプのババ抜き、七並べをしたり、みかんの房を針でつりあげるみかん取りゲーム。
外はピューピューと大風が窓を揺らして吹き込んでいるというのに我が家はゲームに夢中。
かけているから皆本気。物資乏しくかけるものは何もないけれどもご飯を作る係、洗濯をする係の労働力をかけるのである。
私と兄は幼いのでお茶漬けといってバツ無し。
そうなると、七並べをしてもいいカードを隠し持ったままパスをするという巧みな技を使うわけでもなくひたすらカードを出していく。
いや、そうじゃない、「パスいち」と言うと、「昌子、覚えちょけよぉ〜」と姉達が恐い目で威圧してくるので、ついホイホイ出してしまう。
お人好しの私にはギャンブラーの素質はないようだ。

ゲームが白熱して面白いときにパタと真っ暗。停電かぁ。それでもゲームはやめられない。
母の仏壇からローソクを拝借して、暗がりに頭突っ込んでムヒムヒとゲームに興じる。
犬神家か!この犬神家も成長していくと、ババ抜き、七並べからセブンブリッジ、ポーカー、花札、麻雀とハードルが高くなってポーカーフェイスの大人の顔になる。

純真無垢な幼い頃ってあったっけ?と思えるほど、時はあっという間に過ぎ、 何か置いてきぼりにしてしまったようだ。
時々は心のアルバムを開いて素直な気持ちにひたってみようと思う今日この頃なのである。

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