江本昌子の「ぶちおきゃん!マチャコの思い出話」 第44回「記念写真」 江本昌子公式ホームページ
江本昌子の
著者:江本昌子
第44回「記念写真」
毎週木曜日更新
作者へのお便りをお待ちしてます。
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明子姉の女子高の時の記念写真が大好き。
修学旅行で行った、江の島海岸での集合写真であるが、明子姉の顔半分が隣の人のおさげ髪で覆われている。
台風が近づいてきた突風の中での記念写真。見ると全員ひどい。
目が開けられずしっかりつぶっている人もいれば、セーラー服の胸元で結ばれているはずのスカーフが風で浮いて口元を覆いねずみ小僧みたいになっている人もいる。
おかっぱ頭の人はずっこりオールバックで全面に顔を押し出されウーパールーパーみたいになっている。
三つ編みの人の髪は真上か真横に飛んでいるし、大爆発の髪の量が多い人は、きっとセミロングなんやろうなぁと推測してみたりして、やれ楽しい。
誰一人にこりともせず、しぶしぶの「早く撮らんかい」という顔がすごくいい。
一人一人の個性がよく出ていて、これぞ記念写真の王道。
こういう撮られる側の心の叫びが写し出されてる目力のある写真は、見る側を釘付けにしてしまうほどの説得力があって何度も見てみたいと思う。
一種の芸術やね。これは。
うちの兄弟八人兄弟のうち(七女+一男)は上から四女まで男児ばかり産んで、五女から下は女の子ばかり。
歳が近いこともあるが、この五女から下の姪っ子とうちの娘でよく一緒にいろんな所へ遊びに行っていた。
当然、写真もたくさんあって、ヨチヨチ歩きの時から現在まで皆の成長の過程が見れて微笑ましい。
今ではいい大人になり、母となって時代は巡っていくんだぁと自分が歳を重ねていることを思い知らされる。
この写真の中に飛びきりお気に入りの写真が一枚ある。
夏休みのある日、プールから上がったこの姪っ子達7人がカメラに納まっているのだが、全員しかめっ面で超ぶちゃいく。
シャッターを押した人が怒らせたのか、皆おびえたように眉間にしわを作って不安顔。
胸に名札を縫いつけたスクール水着が出尻出腹の幼児体型をもろに写し、濡れた前髪がのり巻きのりを切って貼ったかのようにおでこにぴったりくっついて変。
五女のところの長女、美沙の頭は七・三に分けたサラリーマンのかつらを乗っけたようで、とても小学生の頭ではない。
六女のところの長女、典子のピースサインは恐る恐る出しているものだから、中途半端に中折れして、ウサギの耳のようなピースになっている。
わが娘、拡子はブーの手を胸に置き、マウンテンゴリラの親戚みたいな顔で笑ってる。
とにかくボートピープルかいって位、きしゃない。
この写真以来、この子達は難民ズと命名し、事あるごとに難民ズ大会の会合を開いている。
気分が優れない時、つらい時、苦しい時、この写真を見て底抜けに笑って悩みを吹き飛ばし、元気になれるので、とても重宝しているのである。
さて難民ズの名誉にかけて、付け加えておくと、もう一枚、このすぐ後に撮った写真もある。
こっちのほうは、いつもの笑顔でピースもビシッと決まり、子供らしく、皆可愛く納まっている。
やっぱり笑顔が一番。笑うこと、屈託のない笑顔でいれることって大事だなぁと思えた。
アハハと声を出して笑えるのは人間だけに与えられた素晴らしい特権。これこそが世の中の最強の武器である。そう思えた。