江本昌子の「ぶちおきゃん!マチャコの思い出話」 第47回「海」  江本昌子公式ホームページ

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著者:江本昌子

第47回「海」

毎週木曜日更新

作者へのお便りをお待ちしてます。

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山口県は瀬戸内海と日本海の2つの海に面し、両方の海の産物に恵まれている。
瀬戸内海であがるかれいやひらめは肉厚で北浦の日本海ではあまり取れないという。
その代わり日本海のほうはウニ、サザエが豊富で味も食感も全然違う。
波のおだやかな浅瀬の海の瀬戸内海で取れるサザエはそのごつごつでっぱった、角のような足もなく丸っこいつるんとした小ぶりなサザエ。
日本海で取れるサザエは荒波から落ちないようにしっかりとしがみついてはってる足がトゲトゲにはり出している。
当然身も硬くプリプリでコリコリしてて超美味。

私が高校を卒業して店を手伝い始めた夏。店のお客さんに誘われて日本海へ海水浴に行った。
すぐ上の孝子姉と三人でお弁当持って夏のバカンスを楽しもう〜。
車で2時間、城下町萩にある有名な海水浴場行くかと思いきや、そこを素通りして延々と走り続け島根県との県境まで行って車はようやく止まった。
ん?ここで泳ぐの?だぁれも泳いでないよ。淋し〜い。
ま、海には変わりないし、レッツゴー!!
ゴボ、ゴボゴボ、ウップ〜!いきなり深いやんか。
浅瀬の海しか泳いだことないので、すぐさま深い海なんて未経験。
それでも機嫌よく姉と泳いでいると、ゴリッ!
今度はお腹をすって痛たたた。何何こんな所に岩があんのぉ。
浅瀬の海しか知らなかったので、これまた未経験。
ギャーギャー傷だらけでやかましく泳ぐ私達を見かねて連れのお客さんが水中眼鏡を貸してくれた。
どれどれと見た海の中は、ヒャーびっくりー。
あたり一面岩場でウニ、サザエも見えるし波に揺れ動く海草の中から小魚が見え隠れしている。
太陽の光がスポットライトのように海の底まで降りそそがれ、それはそれは綺麗な別世界。
よくもまぁこんな海とも知らずに、バチャバチャ泳いでいたもんだ。
さっそくサザエ取りに変更。おしりを高く上げて真下にまっすぐ一気に逆立ちするようにと潜りかたを教わり、いっぺんでマスターした私達は俗とハゲで大量のサザエを取ることができた。
あ〜面白い。海ってこんなに楽しいものなんだと実感できて、その夏は暇さえあればもぐりに行っていた。
真っ黒に日焼けした身体がやっとおさまった翌年の夏、同じようにサザエ取りに同じ海に行ってみた。

ところがそこは道路が拡張され、立派な防波堤が出来上がって様子が変わっていた。
日本海の荒波予防の為か。少し沖の私達が素もぐりしてサザエを取っていた所に大きなコンクリートのテトラポットがゴツゴツと投げ捨てられたかのように並んで置いてある。
「これじゃあサザエもおらんねぇ」
あれ以来私達は海には潜っていない。

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