江本昌子の「ぶちおきゃん!マチャコの思い出話」 第58回「修学旅行」(後編)  江本昌子公式ホームページ

江本昌子の

著者:江本昌子

第58回「修学旅行」(後編)

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大ミエをきり皆の拍手でやっとその場を終えることができた。鼻息荒く帰宅し その勢いのままネジリ鉢巻きで訪れた観光パンフレットとにらめっこしながら一気に書きあげた。
確か仏像のことにふれ『菩薩像は仏になるまでの修行の身で人間の欲を物にみたてて何かしらの道具を身に付けているが そのすべての欲をとり払い無欲となって初めて仏様になれる、だから仏様は何も身につけず後光がさすようになるので見ていて面白い』という事を書いて提出した。

楽しかった一学期が終わる頃 担任に居残りするようにと命じられた。何だ何だあ?と案じた友人4人も付き合ってくれて肩を怒らせて待っていると担任が重そうなガリ版をどっさり抱えてやってきた。
「この江本の感想文を書き移すこと」と頼んでるわりには高圧的で相変わらずいけすかん。
私達は原稿を二枚ずつに振り分け早く終わらせる作業をした。ペラペラの薄いガリ版紙に先が針のようにとがった金属ペンで穴が開かないようにガリゴリと書き移した。

スポーツの秋、芸術の秋、二学期には文化祭がある。校長が国会議員ということもあって来賓も多く場内の半分近くを埋めている。私は開幕一番の筆曲『春の海』に演奏出演。
オホホホ 誰も信じないけどわたくし お琴の免状持ってんの。師範の免状を持ってる茶里姉さんにくっついて行って私も中学から習ってたの。筆曲をしょっぱなにもってきてるのは ざわめく生徒を靜かにさす為という学校側の思惑があるのであろうが あま〜い!

幕が開くとピィーピィーとやかましい。淡いピンクの着物に濃紺の袴、うっすら紅をひき すまして座ってる私に向かって「孫にも衣装〜」「エモチンかっこいい〜!」って、
座長大会か おまえら!
いつも大食堂でギャラリーに囲まれて漫才してる私ってばれちゃったのね。
私立のマンモス女子高。
当然のようにスポーツに力を注いでいて優秀な人材を集めて全国レベルの有名校にと必死。

全生徒集会では その表彰が長々と続く。
「ソフトボール部全国大会優勝」
「バスケット部県大会優勝」延々と続き最後に
「県作文コンクール優秀賞○○さん」と生徒会長の名が呼ばれた。すご〜い! やっぱり進学コースは違うなあと思った。それから暫くして受賞した生徒会長の作文が配られた。
読んでビックリ!あれ?これ私が書いた修学旅行の感想文やん。手伝ってくれた友達もすぐ気が付いた。どおりで原稿を書き移す時に題と名前は書かなくてよいと念を押された訳だ。
「こんなの許せん!文句言いに行こう」と 躍起になって皆は騒ぎ出したが 当の私は「これが私立校のすることよ」と一人クールに冷めて別にとりあわなかった。

それよりも下町の飲み屋街で育った両親がいない 立派な不良の私は 何か胸のつかえがスッと取れたような晴々しい気持ちになれて何故かむしょうに嬉しかった


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