江本昌子の「ぶちおきゃん!マチャコの思い出話」 第71回「クロ」  江本昌子公式ホームページ

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著者:江本昌子

第71回「クロ」

毎週木曜日更新

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クロと呼んでいた野良猫がいた。体じゅう真っ黒でぶくぶく太り しゃがれ声でニャ〜ゴと鳴く ちっとも可愛くないのに人なれしていて足元にからんでくる、また捨てられたんかあ。和食の店をしているとエサに困らないだろうと捨てていくのだろう、結構な数の猫の面倒をみてきた。食事処なので店内では飼えないので駐車場の奥の倉庫の陰に残飯をもって行っていた「君達ネズミの一匹ぐらいはやっつけてよ」と言うのに一宿一飯の恩を忘れて そのうち居なくなる、ま いいか。いろんな猫に名前を付けた。目が異常に大きくギラギラに輝く子猫は「サングラス」キジ猫の頭の毛並みがサラリーマンの髪型みたいに分けて見える奴は「三 七」手足の白い部分が長い奴は「ハイソックス」三匹捨てられていた奴は「ブー」「フー」「ウー」いちばん長くいたのが このクロ。鼻ペチャで目は小さく ぶちゃいくで それで真っ黒だから不気味な感じ、しかし この猫は不思議と福の神だった、まさに招き猫、給料あげちゃいたいほど。店の入り口にちょこんと座りニャ〜ゴと鳴くと決まって客が次から次へと押し寄せる、こっちは入り口に気色悪い猫がいたらいけんと追っ払いたいのに客がどんどん来るので そんな暇ない一段落して入口を見ると居ないのでホッとしてたら いつの間にか客と一緒に店に入ってた コラコラ!ちみはお客じゃないんだからと外に出すけど又忙しくなると今度は堂々と客の顔して入ってくる、もぅ〜。
ある日 事故にあったのか生まれつきかわからないけど後ろ足が全然動かない猫が捨てられていた、カラスがカァカァやかましいので裏に出てみると その猫を突っついていた、クロはその猫をかばい襲ってくるカラスに立ち向かってシャーと牙をむいていた、私達はその猫だけ厨房の広い土間で飼うことにしたリハビリで少しづつ少しづつエサを遠くに置き 後ろ足を引きずりながらやっと前足で歩けるようになった、天気のいい時は外に出してやりクロと一緒に仲良く遊ぶ、曲がる時にはパタッと後ろ半分を倒しまた身を起こして直角に曲がる、いいぞ いいぞ!まっすぐしか歩けなかったのに 凄いぞぉ!しばらくクロと遠出を楽しんでいたが 所詮長生きできない猫だったのであろう奥のエサ場で例のカーブで曲がる横倒しの姿のまま冷たくなっていた。そのうち気がつけばクロも居なくなっていた。クロは人に愛されなくても人を引き寄せる力は絶大だった、あの横着な態度でどこに行っても奴は人を幸せにしてるんだろうなあ しかし困ったなあ クロには未払い給料がまだあるというのに。

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